特定技能の支援業務とは
特定技能所属機関が行うべき支援業務について確認しましょう。
特定技能の支援業務について確認していきましょう。
確認事項①:特定技能外国人が十分に理解できる言語で支援を行うことができますか?
1号特定技能外国人となる要件の一つとして、日本語能力に関するものがあります。1号特定技能外国人については、「ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有する」必要があるのです。目安としては、日本語能力試験のN4程度とされています。
特定技能所属機関が、日本語レベルN4想定の特定技能外国人に対して、事前ガイダンスや在留中の生活オリエンテェーション、相談苦情対応、定期的な面談等の支援を行う際、全てを日本語で支援対応するというわけにはいきません。特定技能外国人は、ある程度の日常会話ができるとしても、法律用語や専門用語、日本語独特の言い回しなどは当然理解できるはずもありませんので、やはり母国語等、外国人が十分に理解できる言語で支援を行う必要があります。
もちろん、特定技能所属機関や登録支援機関の支援担当職員が外国人の母国語をネイティブレベルで話せなければいけないという事ではなく、社内の通訳者や社外の通訳会社などに委託して同席してもらうといった形でもかまいません。
確認事項②:支援計画は作成されましたか?
1号特定技能外国人と特定技能雇用契約を締結する特定技能所属機関は、当該外国人が当該活動を安定的かつ円滑に行う事ができるよう、職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援(1号特定技能外国人支援)の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成する必要があります。この1号特定技能外国人支援計画は、出入国在留管理局へ在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請を行う際に提出しなければならない書類です。
1号特定技能外国人支援計画に記載しなければいけない支援内容は以下の項目となります。
- 事前ガイダンスの提供について
- 出入国時の送迎について
- 住居の確保に係る支援について
- 生活に必要な契約に係る支援について
- 生活オリエンテェーションの実施について
- 日本語学習の機会の提供について
- 相談又は苦情への対応について
- 日本人との交流促進に係る支援について
- 非自発的離職時の転職支援について
- 定期的な面談について
- 行政機関への通報について
1号特定技能外国人支援計画書の内容は、当該外国人にしっかり理解していただかなければならない内容ですので、1号特定技能外国人の母国語等、当該外国人が十分に理解できる言語により作成し、内容を理解したうえで、署名をもらう必要があります。
確認事項③:事前ガイダンスを実施できますか?
特定技能所属機関(支援を登録支援機関に委託した場合は登録支援機関)は、特定技能外国人に対して事前ガイダンスを行う必要があります。「事前」ガイダンスですから、少なくとも特定技能雇用契約の締結時以後、出入国在留管理局への在留資格認定証明書交付申請又は在留資格変更申請前に実施することとなります。在留資格書申請時には、事前ガイダンス確認書に特定技能外国人の署名をもらって提出する必要があります。
事前ガイダンスは、対面やテレビ電話等を用いて行う事になりますが、特定技能外国人の日本語レベルがN4程度の想定ですから、やはり母国語での説明が必要不可欠です。日本人支援担当者等が事前ガイダンスを行う場合には、通訳等の同席が必要になりますね。
事前ガイダンスでは、最低下記9項目の情報提供が必要になりますのでご確認ください。
- 従事する業務の内容,報酬の額その他の労働条件に関する事項
- 日本において行うことができる活動の内容
- 入国に当たっての手続に関する事項
- 保証金の徴収や違約金を定める契約の締結をしておらず、かつ、締結させないことが見込まれること
- 自国等の機関に費用を支払っている場合は、その額及び内訳を十分理解して、当該機関との間で合意している必要があること
- 支援に要する費用について、直接又は間接に負担させないこととしていること
- 入国する港又は飛行場において送迎を行うこと
- 住居の確保に係る支援がされること
- 職業生活,日常生活又は社会生活に関する相談又は苦情の申出を受ける体制があること
確認事項④:特定技能外国人の出入国時に空港等への送迎ができますか?
特定技能外国人に対する支援内容の一つとして、「当該外国人が出入国しようとする港又は飛行場において、当該外国人の送迎をすること」というものがあります。ここでいう「送迎」とは文字通り、外国人が入国する際のお迎えと外国人が出国する際のお見送りです。出国時については、空港へただ送り届けるだけにとどまらず、外国人が保安検査場に入場するのを見届ける必要があります。
送迎の手段としては、社用車、タクシー、電車、バス等、いろいろな交通機関を利用することが考えられますが、この送迎に係る交通費については、誰が負担することになるでしょうか?特定技能外国人を受け入れる場合、外国人が出入国しようとする港又は飛行場において当該外国人の送迎をすることは、受入れ機関(登録支援機関へ委託可)が義務として実施しなければならない支援であることから、交通費については受入れ機関(登録支援機関へ委託した場合、登録支援機関)が負担することになります。
確認事項⑤:外国人の住居確保に係る支援はできますか?
1特定技能外国人が日本で安心して働くためには、まず、住居の確保が欠かせません。法律には、受け入れ機関が行うべき支援として「当該外国人が締結する賃貸借契約に基づく当該外国人の債務について保証人となることその他当該外国人のための適切な住居の確保に係る支援」が必要とされています。
住居の確保に係る支援には、賃貸借契約の保証人となることのみならず、適当な保証人がいない場合は、賃貸保証会社を利用することも可能です。この場合、賃貸保証会社に支払われる手数料については、受入れ機関において負担することになります。また、当該外国人が希望する物件情報の提供や不動産仲介事業者の紹介、必要に応じて当該外国人に同行し、住居探しの補助なども行う必要があります。もちろん既に受入れ機関が所有する社宅等を当該外国人に住居として提供することも可能です。
ここでいう支援とは、住居の確保に関わることですので、必ずしも受入れ機関等が住居費用を負担することまで求められているわけではありません。したがって、当該外国人が滞納した家賃を受け入れ機関が立替支払いした場合などは、外国人に対し、立て替えた家賃分の請求を行っていただいても差し支えありません。
確認事項⑥:適切な情報提供を行う事ができますか?
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人が日本に入国した後(当該外国人が本邦に在留している者である場合は、在留資格の変更許可を受けた後)、下記に掲げる事項に関する情報の提供を実施しなければなりません。
- 日本での生活一般に関する事項
- 当該外国人が履行しなければならない又は履行すべき国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続
- 相談又は苦情の申出に対応することとされている者の連絡先及びこれらの相談又は苦情の申出をすべき国又は地方公共団体の機関の連絡先
- 当該外国人が十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療機関に関する事項
- 防災及び防犯に関する事項並びに急病その他の緊急時における対応に必要な事項
- 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他当該外国人の法的保護に必要な事項
中でも、上記②の1号特定技能外国人が履行しなければならない国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続(例えば、住居地に関する届出・国民健康保険・国民年金に関する手続及び年金の脱退一時金請求の手続・納税に関する手続など)については、必要に応じて、関係機関への同行その他必要な支援をすることとされています。当該外国人が日本で生活を送るうえで、困らないよう適切な情報提供をしてあげる必要があるということですね。
確認事項⑦:生活に必要な契約に関する支援を行えますか?
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人の銀行等における預金口座開設、携帯電話の利用に関する契約その他生活に必要な契約に係る支援を行う必要があります。ちなみに「その他生活に必要な契約」とは、例えば電気・ガス・水道等ライフラインに関する契約などです。
当該外国人が日本で生活していくうえで、銀行口座・携帯電話・ライフラインは、生活に必要不可欠な契約です。しかし、日本の生活に不慣れで日本語もままならない外国人にとっては、どこでどのような手続きを行えば良いかすらわからないでしょう。単独でこれらの契約を進めていくのは、外国人にとって非常にハードルが高い作業といえます。
したがって、当該外国人がこれらの契約を適正に行うことができるよう、特定技能所属機関は、外国人が契約手続を行う際に必要な書類や窓口を案内するとともに、外国人であることや日本語のコミュニケーション能力不足により契約が阻害されないよう、必要に応じて当該外国人に同行して各種手続の補助を行っていただく必要があります。
確認事項⑧:日本語学習の機会を提供できますか?
特定技能所属機関は、特定技能外国人への支援の一つとして、日本語による円滑なコミュニケーションが可能となるような日本語学習の機会を提供する必要があります。
受入れ対象の1号特定技能外国人は、既に入国の段階で「ある程度の日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力を有する」という一定の日本能力水準をクリアしていますが、日本に働く外国人にとって、日本語のスキルアップは、日本社会の一員として円滑に在留するためには非常に重要といえます。日本語能力の向上とともに日本人と日本語によるコミュニケーションを円滑にとることで、外国人にとっても住みやすい共生社会の実現が促進されます。会話によるストレスが減少することで、外国人及び受け入れ機関双方にとって好影響が期待できますので、外国人を受け入れる特定技能所属機関は、特定技能外国人が日本語による円滑なコミュニケーションが可能となるよう適切な支援を行う必要があります。
ただし、ここでいう日本語学習の機会の提供は、必ずしも日本語教育機関や私塾に通学させなければならないというものではありません。例えば、日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて同行して入学の手続の補助を行うことや、自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報の提供し、必要に応じて日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の利用契約手続の補助を行うこと、1号特定技能外国人との合意の下で、日本語教師と契約して1号特定技能外国人に日本語の講習の機会を提供するなどが考えられます。
確認事項⑨:日本人との交流促進に係る支援を行えますか?
特定技能所属機関は、特定技能外国人への支援の一つとして、日本人との交流促進に係る支援を行う必要があります。
必要に応じ、地方公共団体やボランティア団体等が主催する地域住民との交流の場に関する情報の提供や地域の自治会等の案内を行い、各行事等への参加の手続の補助を行うほか、必要に応じて同行して各行事の注意事項や実施方法を説明するなどの補助を行うことや、日本の文化を理解するために必要な情報として、就労又は生活する地域の行事に関する案内を行うほか、必要に応じて同行し現地で説明するなどの補助を行う必要があります。
確認事項⑩:非自発的離職時に転職支援できますか?
特定技能所属機関は、特定技能外国人が、その責めに記すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合、当該外国人が特定技能の活動を引き続き行う事ができるよう転職支援を行う必要があります。労働者の「責に帰すべき事由」によらない雇用契約解除ですから、例えば、会社が倒産する場合や会社の経営不振による人員整理などが考えられます。
行うべき転職支援の具体例を下記に列挙します。
- 所属する業界団体や関連企業等を通じて、次の受け入れ先に関する情報を入手し提供する。
- ハローワーク等を案内し、又は場合によっては同行し次の受け入れ先を探す補助を行う。
- 当該外国人が円滑に就職活動を行えるよう推薦状を作成する。
- 職業紹介許可事業者の場合、就職先の紹介あっせんを行う
- 当該外国人が求職活動をするために必要な有給休暇を付与する。
- 離職時に必要な行政手続きについて情報を提供する。
- 倒産等により、転職支援が適切に実施できないことが見込まれる場合などは、それに備え当該機関に代わって支援を行うものを確保する。
確認事項⑪:定期的に面談を行えますか?
特定技能所属機関(登録支援機関へ紙片を委託した場合は登録支援機関)は、1号特定技能外国人と定期的に面談する必要があります。
特定技能外国人の安定的かつ継続的な在留活動を確保するための支援として、少なくとも3か月に1回以上の頻度で、支援責任者又は支援担当者が、特定技能外国人及びその外国人を監督する立場にある者と定期的に面談を行ってください。「外国人を監督する立場にある者」とは、特定技能外国人と同部署の職員であり、当該外国人に対して指揮命令権を有する者のことを言います。
定期「面談」ですから、電話等で話すという事では足りず、直接、対面して話をしていただく必要があります。ただし、漁業分野等の場合は、長期間にわたって洋上で操業し、3ヶ月以上帰港しないこともあるでしょうから、その場合は無線や船舶電話などを利用し、特定技能外国人及びその監督者と連絡を取ることとし、帰港した際に支援担当者が面談を行うという扱いでも問題ありません。